2012年3月31日土曜日

東日本大震災時における震災対応の記録 報告書

東日本大震災時における震災対応の記録 報告書 を発刊しました。

■本報告書の目的
1)災害緊急対策本部活動の記録の編集および今後の対応
 対策本部は3月11日に現地教職員によって暫定的に設置され当面の対応策を検討した。停電・断水といった混乱した状況の中で、対応策の検討結果およびその実施記録はメモ程度しか残されていない。理事長・学長が到着された14日には対策本部が正式発足し、本部会議の結論は模造紙ベースでまとめられたので、記録精度を少々高いといえるが、かなり散逸的である。そこで、関係者のメモや記憶を掘り起こし、災害時等非常時の対応についての基礎資料として可能な限り精度の高い活動記録を編集する。合わせて、災害時等非常時の対応について、今後の本学園の行動指針の基礎資料のひとつを得ることを目的とした。

2)ワーキングループの構成

災害緊急対策本部に参加した者のうち、大学に所属する以下の者をWGコアメンバーとした。
  主査 佐藤直由 医療福祉学部・学部長 
  幹事 須藤 諭 総合情報センター・センター長
  委員 岡田誠之 健康社会システム研究科・研究科長 
      西本典良 医療福祉学部保健福祉学科・教授
      松永哲夫 大学事務局・局長
      髙橋勝則 大学事務局・局次長
 また、当時緊急対策本部に参加され現在大学以外の所属となっている高坂名誉学長、佐藤局長、福田局長、今野局長、吉里部長、野田校長、熊谷教頭、阿部部長らの各位に協力を求めた。
 本WGは、「災害時の地域支援検討WG」(主査:岡田誠之教授)と連動して作業を進めた。


■本報告書の編集に当たった西本典良教授(保健福祉学科)による巻頭言
はじめに
  平成23年3月11日に発生した東日本大震災は未曾有な大災害を東北地方全域にもたらした。本学キャンパスにおいては、春期休暇中であったために数百人程度の学生しかいなかったこと、大きな建物の崩落がなかったために学生や教職員の怪我などがなかったことは不幸中の幸であった。学生も教職員も家族や友人知人との安否確認がとれず、停電と断水という状況の中で情報も乏しく、頼れるのは携帯のワンセグ放送とラジオのみという状況であった。さらには続く余震、これからどうなるのかという不安、私たちは小雪舞う寒さの屋外で身体も心もただ震えるばかりであった。
150名を超える教職員と300名を超える学生がここにいた。「誰かが何かをしなければならない」そんな気持ちから、発生後ただちに何人かの教職員の呼びかけにより緊急対策本部が設置された。対応マニュアルもなく、物資もないという大変な困難な状況下、刻々と変わる状況の中で、日に何度もミーティングを重ね、一つ一つの問題に対処してきた。
今回の震災のような人の生死に関わる非常時に直面した時に、大学は何を成すべきか、何にどう対応すべきなのか、そしていかに素早く対策本部を機能させ、医療支援体制をつくり、学生・教職員の命と生活をいかに守り抜くか、さらには全大学人の安否確認をどう進めるか、大学周辺の地域住民への支援をどうするのかなど、私たちが直面した課題は山ほどあった。

●本記録の目的
本記録は今回の災害において私たちが行ってきた一つひとつの対応を振り返り、そして検証することを目的としている。今後、前を向いて歩んでいくために何を準備すればよいのか、どれほど困難な状況におかれても困らないための対策をいかに作り、準備するのかという重要な課題がある。こんな災害は2度と経験したくないが、もし万が一にでも同じような局面に置かれたときに再び同じ苦労はしてはならない。地震ばかりではない、火災や爆発という事故や、台風や大雪などの自然災害、備えるべき事態は幾多もある。それらを想定し、毅然とした対策を立てるための基礎資料として活動の記録をできる限り正確に残しておくことはこの震災を体験した私たちの義務であると考えている。
本報告書において重視したのは「あのときに何が起こり、私たちがどんな事態に直面し、その場にいた一人ひとりが何を思い、みんなでいかに対処してきたのか」を明らかにすることである。震災から1年有余が過ぎ、巷ではいろいろな出版物が発行されている。何のためだろうか、時間が経ち落ち着いたからということだけではない。関係者にとっては耐え難い時間が過ぎ、それを経て、やっと「あの時」と向き合うことができるようになったのである。そして「あの時」と向き合い、それを語ることで、前に進もうとしているのである。それは何よりも「これから」を歩むために避けて通れないからであり、「これから」は「あの時」を出発点にしなければならないからだと思われるのである。

「あの時」を語る中で「これから」を考えることの大事さ
本学が、そしてその場にいた者たちが直面した「経験」は、沿岸部の人々が被ったとてつもない津波と原発の恐怖という「被災」とは異なる。彼らの経験した悲劇はそれに代わるものがないほどの過酷な経験である。しかしながら、「あの時」、「この場」にいた者たちの経験もまた、「とてつもないできごと」であったのも事実である。危機に直面した組織は本当の意味での力量が問われる。その組織が抱えているさまざまな弱点も強みも必然的に露呈せざるを得ない。とすれば私たちにとっても「あの時」を振り返ることは、私たちにとっての「これから」を創るためにどうしても必要なことであると思われる。
機会があって先月、石巻から南三陸、そして雄勝まで足を伸ばしてきた。この雄勝は当時保健福祉学科の4年生であった髙橋勇気君が被災した地である。彼はここで育ち、暮らし、縁があって私たちの大学で学んでいた。あまりにも若い命を私たちは失った。若き一人の青年の冥福を心から祈り、海に向かい黙祷を捧げた。今、目の前に広がる海はあまりにも静かである。親御さんの無念を思えば私には語る言葉もない。
震災から約500日が経ったにもかかわらず、大きながれきの山、廃車の山、壊れたままの民家、底をむき出しにしてひっくり返っている3階建てのビル、壊れた漁船・・・至る所に津波の爪痕は残る。一方であちこちにある「頑張ろう!」の文字、子供たちの描いた復興を願う壁画、そこには塞ぎようもなくバックリと開いたままの傷と人々の内部からあふれる出る希望が混在する。どちらも現実である、共存する現実である。深い悲しみを乗り越えると言うことはこういうことなのかと思った。今を生きていくことが積み重なることで過去の傷が少しずつだけれども塞がれていく、修復されるわけではないが、傷として目に見えるものは少しずつ減っていくのかもしれない。
「復興」と口にすることにはやはりはばかられるものがあるが、たくさんの人々の悲しみや口惜しさが少しずつでもいいから癒されて欲しいと心から願うものである。改めて2011.3.11東日本大震災に直面し、いまだその傷を抱えながらそれでもなお、前に進もうとしているすべての人々に心からのエールを送るとともに、我々もまた共に歩んでいこうとしていることをここに誓い、本報告書の巻頭言としたい。


震災対応の記録作成WGを代表して 西本典良(保健福祉学科・教授)


2012年3月30日金曜日

本学の災害時における地域支援の可能性 その4 報告書

本学の災害時における地域支援の可能性 その4 報告書を発刊しました。

報告書の概要(抜粋)

平成20年度のWGは本学で建築設備を活用する地域支援策として、「緊急給水設備」と「緊急電力供給設備」について基本的な検討した。

平成21年度のWGは緊急時の事務体制、医療対応体制および医療用具の整備を行い、「緊急給水設備」について、装置の試作および設置を試みた。さらに「移動式太陽光電池教材」を非常用に転用することの可能性を検討した。

平成22年度は、災害時非常用水栓の実地装備を平成22626日(本学感謝の日)に、本学2号館の受水槽にて供用開始の披露会を行った。平成23311日の東日本大震災の発生にともなって、312日から7日間にわたり地域の住民に緊急給水を実施することとなったところである。

 平成23年度は311の東日本大震災の対応の反省をこめて、災害時の本部機能に必要な電源等の確保として発電機、照明器具、移動式太陽光発電機の整備計画、災害時に備蓄すべき生活用品の確保、災害時用専用備蓄倉庫の必要性、さらには国見町内における既存設備である受水槽を活用する水供給体制の検討を行うことを目的として活動をおこなった。

また、本WGの成果については、平成23年度の本学感謝の日(平成23625日)において「311緊急給水の報告会」を行い、増設された3号館地下受水槽の給水システムも披露した。平成2415日(本学互礼会)には、本学学生食堂にて非常時防寒寝具・食料等の展示を行い、災害時の備蓄の必要性の啓蒙に努め、同年125日には宮城県の産学官連携フェアにても、「既存設備を活用した災害時緊急給水システム」のポスター及び実機の展示を行い産官への情報提供および協力養成に務めた。


本WGの活動は過去3年度に引き続き、地域連携室に設置して検討が進められた。
WGにおける調査研究の主たる経費は、従来と同様に本学平成23年度教育計画支援費を須藤諭教授が申請を行ったが、申請テーマは新たに「東日本大震災の経験を踏まえた本学の地域支援の検討」とし、2つのサブテーマとして
①「緊急災害対策本部活動の記録編集WG」
②「災害時の地域支援検討WG」
を設けた。
 本報告書は ②「災害時の地域支援検討WG」の活動として位置づけられるものである。

WGの組織体制
本年度も本学地域支援室に災害時の地域支援検討WGを設立し継続して、研究的検討を以下のメンバーで行った。
主査 岡田誠之 科学技術学部人間環境デザイン学科・教授
幹事 須藤 諭 科学技術学部人間環境デザイン学科・教授
委員 渡邉隆夫 医療福祉学部リハビリテーション学科・教授    
    川村広則 科学技術学部人間環境デザイン学科・講師
    松永哲夫 大学事務局・局長
    加藤有信 法人事務局管理課・課長
    前田信治 科学技術学部人間環境デザイン学科・助手
 今年度は「東日本大震災の経験を踏まえた本学の地域支援の検討」なるメインテーマの下に、本WGと密接に関連するテーマの検討を行う、「緊急災害対策本部活動の記録編集WG」(主査:佐藤直由教授)を設定したので、同WGとも連動して仕事を進めた。

2012年3月23日金曜日

シンポジウム『東日本大震災・建築設備被害報告と今後に向けて』


岡田教授:趣旨説明
 シンポジウム『東日本大震災・建築設備被害報告と今後に向けて』が2012年3月23日に仙台市ユアテック会議室にて開催された。本学から岡田誠之教授及び須藤諭教授が講演を行った。





 4つの建築設備関連学協会である日本建築学会東北支部環境工学部会(部会長:宮城教育大学 菅原正則准教授)、空気調和・衛生工学会東北支部(支部長:新日本空調(株) 仲村光史)、電気設備学会東北支部(支部長:東北文化学園大学須藤諭教授)、建築設備技術者協会東北支部(支部長:日新設備(株)黒澤正志)は、3・11東日本大震災による建築設備の被害状況を調査するため、東北地方建築設備関連学協会災害調査連絡会(会長:東北文化学園大学 岡田誠之教授)を結成して、調査や対策の検討、報告書の執筆等を行って来た。
須藤教授:講演
 これまでの被害調査内容を報告すると共に、今後の対策、建築設備分野の技術者や研究者として何をすべきか等をディスカッションの場とするため、2012年3月23日に本シンポジウムを開催した。

講演会全景
シンポジウムの開催概要は以下の通り。
主催:日本建築学会東北支部環境工学部会、空気調和・衛生工学会東北支部、
    電気設備学会東北支部、建築設備技術者協会東北支部
協賛:日本技術士会東北本部衛生工学・環境・上下水道部会、住まいと環境東北フォーラム
後援:日本電設工業協会東北支部、日本空調衛生工事業協会東北支部、東北空調衛生工事業協会、
    宮城県空調衛生事業協会、日本設備設計事務所協会東北ブロック、山形県設備技術協議会
日時:平成 24 年 3 月 23 日(金) 10 時~12 時 30 分(開場:9 時 30 分)
会場:(株)ユアテック本社 3 階 C 会議室    
総合司会:空気調和・衛生工学会東北支部長 仲村光史(新日本空調)
シンポジウム次第
 ① 主旨説明(講師:東北文化学園大学 岡田誠之)
 ②建築設備の被害
  a)建築設備被害の概要(講師:東北文化学園大学 岡田誠之)
  b)空調設備の被害(講師:仙台高等専門学校 内海康雄)
  c)給排水設備の被害(講師:ユアテック 赤井仁志)
  d)電気設備の被害(講師:東北文化学園大学 須藤諭)
  e)ライフラインの被害(講師:東北工業大学 渡邉浩文)
  f)その他の被害(講師:宮城教育大学 菅原正則)
 ③ 行政・関連学協会の動向とこれから(講師:鹿島建設 一方井孝治)
 ④ ディスカッション・今後の対策と実務者・研究者は何をすべきか
   コーディネータ:建築設備技術者協会東北支部長 黒澤正志





2012年3月14日水曜日

空気調和・衛生工学会東北支部 第1回学術・技術報告会


本学人間環境デザイン学科の岡田誠之教授は長年にわたって空気調和・衛生工学会東北支部の役員を務めてこられた。岡田誠之教授は役員就任当初から、役員会において東北地方の設備技術者の研鑽の場を設けるべきことを提唱されてきた。この度漸くこれに該当する研究報告会が、東北支部第1回学術・技術報告会として2012314日に東北工業大学にて開催された。同時に技術関連展示も行われるに至った。
筆者も2007年から空気調和・衛生工学会東北支部の役員となり、この度の第1回学術・技術報告会の実行委員会(実行委員長:内海康雄仙台高等専門学校教授)の委員を仰せつかり、微力ながら開催のための準備に当たったので、その概要をここに報告する。
学術・技術報告会は東北地方の設備技術者のレベル向上を目的として開催されるもので、空気調和・衛生工学会東北支部が主催するが、その趣旨から設備関連学協会にも共催を要請した。その結果、電気設備学会東北支部(支部長:須藤諭)、建築設備技術者協会東北支部(支部長:黒澤正志)日本技術士会東北本部(本部長:吉川謙造)の3学協会が共催団体となった。また、協賛団体として、日本建築学会東北支部、住まいと環境東北フォーラム、後援団体として、日本空調衛生工事業協会東北支部、東北空調衛生工事業協会、日本設備設計事務所協会東北ブロック、宮城県空調衛生工事業協会、日本電設工業協会、山形県設備技術協議会の協力を得た。
東北地方を中心として、50件を超える空気調和・給排水衛生・電気・防災等の建築設備、建築環境工学一般に関する講演(研究・技術)発表のエントリーがあった。当日は、研究・技術報告会のほか、技術展示が同時開催され、企業の最新技術の展示も行われた。その他、記念式典、特別セッション、交流会も実施され盛況であった。

本学からは大学院生はもとより、卒業研究の成果を4年生が数多く発表した。発表テーマ、発表者は以下の通りであった。4年生は、久住知裕君が「鉄電解法におけるリン除去・回収に関する研究」、佐藤隆寛君が「浴槽内の水流に関する実験的検討(1)」、佐藤はるか君が「給水配管内の残留塩素の挙動」、佐藤蓉子君が「東北地方の福祉施設における2011年夏期節電に関する実態調査」の各テーマで発表した。
   
大学院修士生は、佐野達也君が「浴槽内の水流に関する実験的検討(2)」、制野達己君が「受水槽を活用した非常用飲料水等の供給」の各テーマで発表した。他に研究員の井城依真君が「事務所建物及び宿泊建物におけるエネルギー消費原単位の地方別・規模別の差異に関する研究(非住宅建築物の環境関連データベースにおける平成21年度調査データによる分析)」を発表し、助手の前田信治君らが「雨水利用施設における水処理の実態と水質評価」をポスターセッションに発表した。