2012年8月10日金曜日

博士論文公開発表会

井城依真氏の博士論文公開発表会が開催されました。

日時 2012年8月10日11:00~12:00
会場 本学1257教室
論文題目
「建物の全国的データベースによるエネルギー消費原単位推定に関する研究」

 当博士学位論文の審査委員会主査の須藤諭教授の司会のもと、公開発表会が開始されました。まず、副査を担当されている岡田誠之研究科長、東北工業大学渡邉浩文教授が紹介されました。論文題目については、数度の審査会の中で題目変更されることになった旨の説明がなされました。

井城依真氏の略歴が紹介され、いよいよ緊張の発表が開始されました。

 井城依真氏によって準備された説明用のパワーポイントスライドは、非常に明快に博士論文の内容が整理されており、約30分間のプレゼンテーションはとても充実したものとなりました。
 プレゼンテーションの終了後、聴講者からの質疑、意見の時間となり、会場から、重要な内容の質問が出されました。井城依真氏は確実に回答を行って行きました。重要な指導的ご指摘もあり、これについては最終審査委員会までに検討を加えると、誠実に応答していました。

 
【論文要旨】
研究は建物の省エネルギー対策に資するため、このデータベースを利用した分析を行うことによって、建物の標準的エネルギー消費原単位を統計的に有意に推定することを目的とした。建物の分析対象は、業務建物として重要な用途である事務所建物、宿泊建物、店舗建物を取り上げた。得られた主な成果は以下の通りである。
1)エネルギー消費原単位の推定において高い精度を得るため、基本的成分と変動的成分に分離する推定法を取り入れ、分離した各成分を「基本負荷」、「夏期変動負荷」、「冬期変動負荷」と定義した。各建物のエネルギー性能については、建物面積当たりの負荷効率で評価するため、各負荷を床面積で除した「負荷原単位」を指標として用いることとした。
2)事務所建物の基本負荷原単位は、導入されている熱源設備を「電力系」、「燃焼系」、「電力・燃焼系併用」に分類した結果、「電力系」、「燃焼系」で修正済重相関係数0.5程度の推定式が得られた。また、変動負荷原単位は、夏期冬期とも「燃焼系」で、修正済重相関係数0.6程度の推定式が得られた。
3)宿泊建物の基本負荷原単位は、熱源設備別「電力系」、「燃焼系」の分析で修正済重相関係数0.5強の推定式が得られた。夏期変動負荷原単位は「燃焼系」で、冬期変動負荷原単位は「電力系」で、修正済重相関係数0.6強の推定式が得られた。
4)店舗建物の基本負荷原単位は、全件数を対象とした分析で修正済重相関係数0.6強の推定式が得られた。夏期変動負荷原単位においても全件数を対象とした分析で修正済重相関係数0.5程度の推定式が得られた。冬期変動負荷原単位は「燃焼系」で修正済重相関係数0.5程度の推定式が得られた。
以上をまとめるに、本研究は、全建物のエネルギー消費原単位について建物規模や稼働状況、気候的条件等の建物の基本的属性を説明変数として、統計的に有意な推定式を得ることができた。その推定精度は既往の成果よりも高く、全国の建物について省エネルギー推進の判断基準となる標準的エネルギー消費原単位を推定することが可能 となった。